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石川博品『クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門』 [本‐小説]

タイトルなげえな!(挨拶) 久しぶりにラノベを読んだのでせっかくだから感想でも。しかし買ったのは実に3年ほど前だったりする。積読にもほどがあるだろう俺

「中野太一さん。キング・オブ・クズであるあなたに、曽我野三姉妹を攻略していただきたいのでシテ」――いつものように山背にくっついて屋上へ行った俺は、二六五五年から来た彼女、カマタリさんに出会った。でも俺、恋愛とか、ムリ。死ぬ。しかもそのターゲットの一人ってウチの学校のNo.1美少女じゃん。ムリ。死……ん? 「強くてニューゲーム」? ……俺、やるよ。クズだって……「モテたいんや!」日本中の男子諸君に捧ぐ、最弱ラブコメ堂々登場!

いやあ楽しく読めましたよ。意外に感じるほど真っ当なラブコメだったし。何年も積読してしまって本当にすまなかった。そしてずっと「カタマリさん」だと勘違いしててごめん。

実は少々タイトル詐欺と言えなくもなかったりする。作中でも主人公は「キング・オブ・クズ」だの「暗くてクサくて画的にキツイ3K生物」だの散々な言われようだ。しかし選択肢を間違いフラグ立てに失敗すると直前のセーブまで強制巻き戻しという反則ワザがあるにせよ、フラグどころか重要イベントすら発生させられないダメ男では決してない。少なくとも学校のNo.1美少女なヒロイン等からとんとん拍子に感じるほどあっさり好意を抱かれる程度には基本スペックは結構高かったりする。これでクズなら俺はなんなんだ。

ただその辺りは上手く処理してもあって「なんだよただのリア充(予備軍)じゃねーか」と鼻に付くことはない。なんだかんだ言っても主人公は前向きなやつだし彼に任務を依頼する未来人のカマタリさんも可愛い。その二人のコントめいたやり取りは読みすすめる推進力にもなっているし。いくら基本スペックが高くとも誰かを好きになりその気持ちを相手に伝えるためには時に自分を変える努力も必要だよね、と。要はこれって『ドラえもん』なのだよなあ、なんて思ったりもした。

面白かったので他の著作も読んでみようかと確認したら、以前ある方からおすすめされていた『ヴァンパイア・サマータイム』の作家さんだと気が付いた。よし、じゃあ次はそれだな・・・などと考えていたら本棚から『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』というのを発掘しましたよ。買ってたんだ。

いやあ、積読も大概にしろよってことですね(オチてない)

ヴァンパイア・サマータイム (ファミ通文庫)

ヴァンパイア・サマータイム (ファミ通文庫)

  • 作者: 石川博品
  • 出版社/メーカー: エンターブレイン
  • 発売日: 2013/07/29
  • メディア: 文庫
後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール (集英社スーパーダッシュ文庫)

後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール (集英社スーパーダッシュ文庫)

  • 作者: 石川 博品
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2013/12/25
  • メディア: 文庫
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長沢樹『消失グラデーション』 [本‐小説]

第31回横溝正史ミステリ大賞の大賞受賞作とのこと。自分にとっても久しぶりの青春(学園)ミステリ。すっかりおっさん化したせいか相性が悪いジャンルだが楽しく読めた。

消失グラデーション

消失グラデーション

話題になっていたので手に取ったのだが、場所によっては入手しづらい状況になってるそうで。発行元の角川書店のサイトでも現在は[在庫無し]状態に。すごいですね。ちなみに同サイトでは冒頭14ページ分が「立ち読み」として公開されています。以下あらすじ。

私立藤野学院高校のバスケ部員椎名康は、ある日、少女が校舎の屋上から転落する場面に遭遇する。康は血を流し地面に横たわる少女を助けようとするが、少女は目の前から忽然と消えた。監視された空間で起こった目撃者不在の“少女消失”事件。複雑に絡み合う謎に、多感な若き探偵たちが挑む!

一読、大変読みやすいなあという印象です。文体にくせが無いのでさくさく読めます。舞台が高校ということもあり登場人物は結構多いんですが、キャラクターをしっかり立たせて書き分けも上手いなと感じました。ミステリとしての肝になるのは上に引いたあらすじどおり、ある少女の「消失」です。高校の敷地内という比較的ひらけた場所とはいえ、誰の目にも触れず姿をくらますことが困難な状況。なぜ、どのように、あるいは誰が、という謎の解明が行われていきます。密室からの人間消失のバリエーションと考えていいでしょう。

ところがですね、この部分はあまり重要ではなかったりするんですよ。もちろん大事な要素ではあるんですが。最大のトリックは小説そのものに仕掛けられています。クライマックスのある瞬間を境に大きく転換します(ネタばらしになってもまずいので詳述は避けますけど)。自分はすっかり騙されてしまい、「おお!そうだったのか」と驚きました。先にも書きましたが読みやすい文体につられてさくさく読み進め、まんまと作者の仕掛けに嵌められましたねえ(単純なやつ)。ミステリを読みなれている人、勘の鋭い人なら途中で「これはもしや・・・」と気付くかもしれないですが。

いくつか気になった点を。見事に騙された負け惜しみでもないんですが、仕掛けそのものがかなりトリッキーで作劇のためだけに用意した感がどうしても強かったこと。まあそれを言い出したらミステリの大半は読めなくなりますけどね。さらにある重要な役どころの人物の扱いに関してもちょっと。作者にはこの人物をメインに据えた別作品の構想があるのかもしれませんが、現時点で発表されていない以上、作者にとってのみ既知で愛着のあるキャラクターに過ぎず、読者からすればよく知らない(知りようもない)客演が大事なところを持っていったようにも見えてしまうんですよ。アンフェアとまではいきませんが「結局お前なんだったの?」とは感じましたね。

とはいえ、とても面白く読めましたので興味をもたれた方はぜひ。自分もこの作者の次回作を今から楽しみに待ちたいと思います。

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ハルヒシリーズの『分裂』と『驚愕』を読んだ [本‐小説]

ファンにとってはまさに待望の新作『驚愕』が刊行されたので。実際には一か月ほど前に読み終えていたのだが、遅ればせながら感想など。自分は一繋がりのエピソードである前作『分裂』を未読だったのでまとめて読むにはいい機会だったが、待ちわびたファンからすればこのブランクは洒落にもならんだろうな。
「我々は4年待ったのだ!」(cv:大塚明夫)みたいな。いや冗談抜きで評価すら変えかねないよね。

涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの驚愕(前) (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの驚愕(後) (角川スニーカー文庫)涼宮ハルヒの分裂 (角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの驚愕(前) (角川スニーカー文庫)
涼宮ハルヒの驚愕(後) (角川スニーカー文庫)

書影のとおり一本の長編を三分冊した構成になってる。ちなみに『驚愕』はオマケの小冊子が付いた前・後巻セット初回限定版として発売されており、自分が購入したのもそちら。うーん、商売上手め。

あらすじに関しては書かなくてもいいような気もするが一応。キョンの中学時代のクラスメイトにして互いを親友と認め合う一人の少女、佐々木さんとの偶然の再会がなにやらとんでもない事態を引き起こすことに・・・みたいな感じです。主人公(この場合はヒロイン)と同じ能力を持つ可能性がありながらそうならなかった人物、さらには主人公チームの対照となる敵対キャラが登場するという、バトル漫画であれば最終エピソードのような展開で、これが最終回だと言われても納得してしまいそう。これはネタバレではないと思うが、このエピソードは一種のパラレル物でもあって、何故そんなことが、そしてどう解決させるのか、という辺りが興趣となるかな。作者の別シリーズである『学校を出よう!』の第2巻ほどには構成も込み入っておらず、アクロバティックな解決でもなかったが楽しく読むことができた。

この「涼宮ハルヒ」シリーズは最新刊も含め11冊が刊行され、いわゆる長編と呼ばれるものは5篇ある(『分裂』と『驚愕』は併せて1篇とカウント)。自分が読んでいるのは第1作目の『憂鬱』、映画化もされ人気の高い『消失』、そして今回の『分裂』+『驚愕』と長編ばかり。たまさか読んだ三編には共通点も多いように感じていて、要は「これって基本的には同じ話だよね」ということ。残念ながら取りこぼし(『溜息』と『陰謀』)があるため長編すべてに共通する特徴か断言できないのは厳しいが、その辺りを少し書いてみようと思う。

いずれも主人公であるキョンが下す決断と選択が肝になっている点。記念すべき第1作の『憂鬱』では「自分自身が、それもヒロインの相手役という重要な役どころを担って舞台へ上がるか否か」を迫られるわけです。続いて『憂鬱』のSIDE-Bもしくは変奏たる『消失』では「主要キャストの役柄および配置の一部変更(それに伴う脚本の修正)に応じるか否か」となるでしょうかね。そして今回の『分裂』+『驚愕』、ここでは「自身を除く主要キャストの総入れ替え(それに伴う脚本の修正)に応じるか否か」であるだろうと。またクライマックスの展開も予期せぬ異空間(『消失』では平行世界か)からの脱出が描かれるあたりも共通かな。どのエピソードにおいてもハルヒに対するキョンの想い、これが最大のポイントだったりするのは興味深い。

  • キラキラ輝く天の川銀河を閉じこめたような瞳
  • 三重連星のように輝く核融合じみた笑顔
  • 真珠みたいに白い歯
  • 輻射熱を放っているとしか思えない圧力笑顔
  • 満月がかすむほどの笑顔
  • 真夏のヒマワリも横を向きそうな明度と熱量を持つ笑み
  • 牡牛座の散開星団を丸ごと圧縮したような笑顔

上に書き出したのは『分裂』と『驚愕』においてキョンがハルヒの様子を表現する際に用いた修辞の一部です。基本的には女性を悪く言うことの少ないキョンですが、それにしてもベタ惚れだなおい、と裏読みしたくなりますな。本人はこれまで「そんなわけあるか」と照れ隠し気味に否定してきたが、今回はとうとう自分の気持ちを半ば認めてるような描写もありましたね。

佐々木さんという魅力的なキャラクターも登場し、次作への前振りのような箇所もあったので、まだまだシリーズは続いていくのかもしれない。同時にここで終わってもいいんじゃないか、と思えたりもして。それほど綺麗に締めくくられてるんですよ今回のエピソードは。最新作が発表されるまでの4年という年月、これはファンにとっても作者にとっても様々な変化をもたらす時間だったのだろうなあと、そんなことを考えてしまいました。

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哀川譲『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』 [本‐小説]

他所さまのレビュー等を幾つか目にし、興味を持ったので手に取ってみた。

俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 (電撃文庫)

俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 (電撃文庫)

ラノベに関してはあまり数を読んでおらず、最近の流行にも疎いロートルな自分が「最近のラノベってこんな感じでしょ?」と勝手に、そして漠然と抱いているイメージに合致する内容だったと思う。以下あらすじ。

聖桐学園名物といえば勇者生徒会と魔王生徒会。人間と人外が共学のこの学園ならではの制度だ。まぁ名前の通り対立している訳で。

伏城野アリス──俺の幼馴染み。完璧超人とはよく言ったもので、容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能な何でも来いなやつだ。おかげで俺はアリスの小判ザメと言われる訳だが……。そんな彼女が生徒会長の勇者になるのはいい。何で俺が魔王になっちまうんだ!? 正体を隠さなくてはならない俺、魔王(俺)を目の敵にするアリス。めちゃくちゃハードな学園生活が待っていて!?

この手のラノベに期待されるだろうポイントを的確に、言い方を変えればあざといまでに押さえているのじゃないか。すべてにおいて平均点だがやるときはやる主人公、幼なじみで完璧超人な美少女(ヒロイン)、お嬢さまでツンデレの吸血鬼(しかも美少女)、クールでツッコミ役もこなす美形アンドロイド、「はわわ~」とか言いそうなマスコット的役割の少女(ケモノ耳)...等々、挙げていたらキリが無い。もちろんキャラクターたちは実に活き活きと魅力的に描かれている。彼らがお約束の展開の中でこれまた期待どおりの行動をし、読者はそれに「きたきたー」と内心で喝采しニヤリングする。ほとんど伝統芸能みたいなものかもしれない。

類似作品を多く読んでいる人には物足りなさもあるんだろうし、こういった「テンプレ」どおりの作品ばかりが増えることに賛否もあろう。だが読者の多くが望んでいるわけだし、その期待に応えるという意味では水準を十分クリアしてると言えるはずだ。もう少し文章を推敲した方がもっと読みやすくなったのにな、と感じる部分は散見されたが、楽しんで読めたと思う。続刊があるなら読もうかなと思えるくらいには。

個人的にお気に入りなキャラクターは吸血鬼のお嬢さまでした。望むなら伴侶(つまり吸血鬼)になってやろうじゃないのさ。あ、他の女性陣もみんな可愛かったので誰でもいいですけどね(最低)。


さて、ここからは余談。この作品はあまり好ましくない形で話題、というかちょっとした騒動になっているそうだ。ぶっちゃけて言えばパクリ、イタダキ、盗作...まあ言い方はどうでもいいが、そういった疑惑をもたれているのだと。某巨大掲示板発の情報を人気・アクセス数のあるまとめブログが取り上げ一気に広まったという流れだ。元になった(とされる)作品のどの部分が該当するか比較検証し一覧にした画像まであるそうで。

さらにはAmazonのカスタマーレビュー。まとめブログが取り上げ騒ぎになるやいなや、批判的なレビューが数件投稿され「評価が高くない有用性のあるレビュー」となった。しかもレビュー自体が2ちゃんねる(あ、書いちゃった)のコピペという笑えないジョークのような話。ちなみにこの騒動以前に疑惑へ言及したものは皆無だった。まあこの反応すらも「テンプレ」どおりと言うべきか。どうせなら後出しジャンケンじゃなく最初からレビューに投稿しておけばいいのにね。

今回の騒動、デビュー作が予想以上に売れて評判も良かったから変に注目されたのかもしれない。だが実際に読み比べた人ってどれくらいいるんだろうか。上に挙げたAmazonのレビューのように、発売から騒動まで若干のタイムラグもあったように思うので。大半は二次・三次情報を元に便乗してるだけってところなんだろう(中には無関係なブログのコメント欄に突入する困ったちゃんもいたり)。これに限らないが、「パクリ(トレース)疑惑」として過剰に反応するようになったのはいつ頃からだったか。ちょっと前なら「ああ、○○(作品もしくは作家名)が好きなんだな」とか、あからさまなイタダキに関しても「やっちまったなあ、こいつ」と個々に思う程度だったんだが。生真面目さというか潔癖さというか、いずれにせよここ数年でやけに目立つ傾向だ。

自分は元になった(とされる)作品を未読なので真偽のほどは判断できないが、仮に噂が真実なら「バカな事をしたもんだ」としか言葉はない。だが同時に他作品からイタダキしてきた(とされる)部分を、一読して気付かれないよう加工する等の狡猾さが作者にあったら、一体どれだけの読者が見抜けたんだろうとも思うのだ。作者の中に「パクリ・イタダキ」という認識は果たしてあったのか。何しろ元になった(とされる)作品は人気もあり現在だって容易に入手できるんだ。既に絶版になり、中古書店等でもなかなかお目にかかれない作品とはわけが違う。本気でやろうと考えたのならあまりにも杜撰すぎるからだ。

繰り返しになるが本作に対する自分の感想は「楽しんで読めた」だ。これが新人である作家さんの地力なのか、もしくは今後どう化けるのか、せめて次作を読んで判断したい。この思いは変わらない。今回の騒動でそれも適わないというなら残念でならない。

数年前、全ページどころかほぼ全コマを他作品からのトレースで構成した、と騒動になった新人さんの漫画があった。「リミックス漫画」という新しいチャレンジだと皮肉られたが、ラノベにおいてもいずれ「リミックス小説」とか「MAD小説」なんて呼ばれるものが出てくるのかもしれない。過去作のデータベースを用意し、キャラクター、舞台設定等の項目を入力したら自動的に雛形の出来上がり。そんなジェネレーターみたいなものは既に誰かが作っていそうだ。効率的ではあるよね。読者が望むものを的確に提供できるんだから。

【2010/06/08 追記】公式に謝罪文が出されたようです。
⇒【電撃文庫&電撃文庫MAGAZINE:電撃文庫編集部よりお詫びとお知らせ

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三雲岳斗『少女ノイズ』 [本‐小説]

五編からなる連作ミステリ。カバーイラストからもっとラノベ的なものを想像していたが、良い意味で裏切られた。帯にもあった解説の有川浩による「ミステリ部分、ぶっちゃけどうでもいい。」という言葉は中らずと雖も遠からず(いささか偏ってはいるけど)。確かにミステリ要素のあるボーイ・ミーツ・ガールと読むのが正しいのかな。いずれにせよ面白く読めた。

少女ノイズ (光文社文庫)

少女ノイズ (光文社文庫)

欠落した記憶を抱え、殺人現場の写真に執着を持つ青年と、心を閉ざして、理想的な優等生を演じつづける孤独な少女。進学塾の屋上で出会った二人が見つめる恐ろしくも哀しい事件の真実とは何か? そして、少女のつけた巨大なヘッドフォンのコードは、どこにつながるのか?

冷徹なまでに美しい本格のロジックで解かれる最大の謎は、エンドロールのあとの二人の未来――。

この作者の本は初めてで、アニメ化もされた『アスラクライン』の人だということすら知らなかった。登場人物の造形はいわゆるラノベに多く見られるものかもしれないが、どちらかといえば硬質な文体が「ライトさ」をあまり意識させない。自分のような、ラノベに苦手意識や先入観を持つ読者にとっては逆にありがたくもあった。もっともラノベをさほど読み込んでいない奴の言うことだ、話半分で聞き流しておいてください。

解説で人気作家から「ぶっちゃけどうでもいい」とまで言われたミステリ部分だが、トリックにも無理はなく不自然さは特に感じない。ただ、いずれのエピソードも動機がかなり突飛には感じた。そういうこともあるかもね、と思えたのは最終エピソードくらいか。まあミステリに現実的なものを求めるのは野暮だし、実際に起きている事件の動機にだって「なにそれ」と言いたくなるものはあるけれど。また、いわゆるアームチェア・ディテクティブなのかとも思ったが、探偵役の少女は意外に行動的だった。明晰な頭脳と病的なまでの正義感、殺人者への憎悪を隠さず事件に対峙する彼女を作中では狩猟動物、美しい獣(おそらくネコ科だろう)になぞらえていたが、自分はむしろハヤブサやタカといった猛禽類をイメージした。ああでもな、それだとツンデレの「デレ」が難しいのかな。猛禽類には「デレ」のイメージは無いか。あるような気がするんだが。うーむ。

シリーズものとして続けることも可能な締めくくりだったが、引用したあらすじにもある「エンドロールのあとの二人の未来」に関してはやはり読者の想像に委ね、単発として終わらせる方がいいかもしれない。魅力的なキャラクターだけに悩ましいところだ。

これは完全な蛇足(というか素朴な疑問)。カバーイラストで一目瞭然だがヒロインの少女は無骨なまでに巨大なヘッドフォンを身に着けている。いわゆる美少女イラストには「ヘッドフォン少女」というジャンルがあって、イラスト集等も発売されるほど定着しているんだが、これって時期的にはどっちが先なんだろ。一定の支持・需要があったものが同時多発的に出てきたってことなのか。

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竹内真『文化祭オクロック』 [本‐小説]

いわゆる青春ミステリとは相性がどうもよろしくないのか、あるいはおっさんの自分は読み解く感性が既に枯渇したのかは定かじゃないが、苦手意識すら芽生えそうなほどだ。そんなことを言いながら懲りずに手を出すんだから、これは一種のツンデレなんじゃないか(違います)。

文化祭オクロック

文化祭オクロック

この作者の本は初めてだ。現時点では本書が最新作となるらしい。以下あらすじ。

東天高校文化祭初日、ブラスバンド部のオープニング曲終了とともに、突如校内放送から謎の男の声が流れてきた! DJネガポジと名乗る男は、リクエスト曲を流しつつ携帯電話でのリレーインタビュー企画を進めていく。文化祭実行委員会と生徒会の合同企画だというが、どこか怪しい。DJの軽快な喋りに沸く生徒たちを尻目に、二年生の古浦久留美はDJの正体を探り始めるが──。

華やかな文化祭の裏で静かに進行する陰謀と、謎のDJの目的とは?

上に引いたあらすじでは“静かに進行する陰謀”とか“謎のDJ”とか、大仰な書きっぷりだがそれほどでもない。人死にが出るとか血なまぐさい展開は一切無し。作中でいつの時代か明示されてはいないがおそらく現代だ。携帯電話、最近のJ-POP、ケータイ小説に学校裏サイト、果ては「セカイ系」なんて言葉まで出てくる。それら風俗意匠、あるいは社会問題を取り入れながらも全体の印象はオーソドックスなものだ。普遍的なテーマと取るべきだろうが目新しさは無い。

基本的に登場人物は善人ばかり。明るく前向きで肯定的、屈折すらしていないように見える。心が健やかなんだな。結末も実に爽やかだ。そこが少々物足りなくも感じた。決して陰惨で救いの無い物語を読みたいわけではないが、あえて言うなら「綺麗事」に過ぎるかなとも思う。事件の背景に学校裏サイト(この言い方自体、当事者である学生さんには浸透していないという話もあるが)やネットいじめを絡めるなら、もう少しやりようもあったろうになーと。少なくともこの結末を用意するのであればね。エンターテイメントである本作にそこまで求める方が間違いか。であるならそもそも持ち出すべきじゃなかったと思うが。

他には文化祭が舞台でありながら、喧騒や高揚といった独特の雰囲気があまり伝わってこなかったのは少し残念だった。物語の構成上、どうしても主要キャラクター中心の描写が多く、単なる舞台装置どまりになってしまったからか。文化祭が舞台の類似作品は他にもたくさんあるんだろうが、自分がつい比較してしまったのは米澤穂信の『クドリャフカの順番』だった。お祭りの描写も含め個人的にはあちらの方が好みかな。

クセの無い文体は大変読みやすく、結末まで一気に読み進められる。明るく前向きな本作はむしろ若い読者にこそ相応しいのだと思う。まあ文化祭なんて遥か昔のことであるおっさんの感想など当てにはならんですよ。

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綾辻行人『Another』 [本‐小説]

作者の最新長編、ハードカバーで700ページ近い(原稿用紙なら千枚を超える)力作だ。ちなみに本編部分だけで数えると666ページなのだが・・・偶然だろうな。発行元の角川書店も専用ページまで用意する力の入れっぷり。自分としても久しぶりの綾辻作品だったがとても面白く読めた。

Another

Another

かなりのボリュームをラストまで一気に読ませるリーダビリティに驚かされる。まさにページターナー。これまで綾辻作品に対して抱いていた面白いんだが少々読みづらいというイメージを払拭するほどで、語弊を承知で「綾辻版ライトノベル」と言いたくなるくらいだった。以下あらすじ。

その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―――。

1998年、春。夜見山北中学に転向してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!
この“世界”ではいったい、何が起こっているのか?
秘密を探るべく動きはじめた恒一を、さらなる謎と恐怖が待ち受ける・・・・・・。

ジャンル的にはオカルト・ホラーでもありミステリでもあり。以前からどちらのジャンルも手がけてきた作者なのでそのハイブリッドだと思えばいい。読了直後はホラー風味のミステリという印象が強かったんだが、ミステリとして考えると反則技スレスレの部分をホラー(あるいはオカルト)要素で補ってもいるので、やはりミステリ風味のホラーと思った方が色々と面倒がなさそう。まあ無理に分類する必要もないんだけれど、新本格ミステリの旗手と呼ばれた作者だけに、そちらの方向を期待すると納得できない人も出てくるか。上手い喩えではないが、現代が舞台でありながらアリバイトリックを成立させるためにタイムマシンを登場させ、なぜそんなものがあるのだとの問いに「あるんだからしょうがないじゃん」と答えられたら、ねえ。それをミステリとは認めない!という意見もあるだろうなあと。本編中の言葉を借りれば「超自然的自然現象」として割り切った方が幸せです。

とは言うものの、読み始めたら先が気になって止まらない。不穏な空気、不可思議な出来事、次第に明らかになる過去、いつしか引き込まれ気がつくとラストまで一気に・・・という感じ。これはネタばらしにはならないと思うので書いちゃうけど、本作は主人公である15歳の少年の一人称形式になってる。そして綾辻行人が得意とするのは叙述トリックだ。眉に唾しながら読むといいんじゃないか。作者からの挑戦でもあるし。もちろん作者の手練手管に翻弄されること自体を楽しむのもあり。同時にこれはいわゆるボーイ・ミーツ・ガール作品でもあり、その要素を楽しむこともできる。その意味では随分と欲張りな小説だ。

個人的に気になったことを少し。ヒロインに当たる少女の造形はあるアニメのキャラクターをどうしても連想させる。自分が死んでも代わりはいるとか言っちゃうあれです。それ以外にも共通する要素があって、以前に読んだ飛鳥部勝則の『堕天使拷問刑』を思い浮かべてしまった(両作品の名誉のためにも書いておくがまったく関連はないです、念のため)。もう一点は舞台をなぜ1998年に設定したのかということ。本作は2006年から2009年にかけて文芸誌『野生時代』に連載されたものだ。連載が始まった2006年に設定しても不思議はないのに。その辺りにも仕掛けを施してあるのかな、なんてことをちょっと考えた。そんな裏読みをしたくなる面白さがあるってことだけど。店頭で見ると本の分厚さに腰が引けてしまうかもしれないが、存分に楽しませてくれる作品なので興味があればぜひ。おすすめ。

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『憂鬱』と『消失』を読んだので [本‐小説]

我ながら今さらにも程があるだろうと。しかも順番がヘンテコなことに。以前から興味を持ちつつも踏ん切りがつかず、映画を観たことが決め手になったからなんだが。結局はTVアニメ→スピンオフ漫画→映画→原作『消失』→原作『憂鬱』となった。読み終えた後、Twitterで呟いたりやり取りさせてもらったこともあって、既に感想を書いた気になっているのだが、折角なのでこちらにも書いておこうと思う。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

先ずはシリーズ第1作目である『憂鬱』、刊行は2003年6月なので実に7年遅れの読了ということになる。先入観もあったのか読み始めは妙に構えてしまったが最後まで楽しく読めた。というか面白いわこれ。スニーカー大賞の大賞受賞は伊達じゃない。この一作で綺麗に完結しているから、シリーズ化は蛇足でもあったのか。基本的な情報を既に知っていたとはいえ、アニメよりも小説の方がすんなり入っていけた。アニメ視聴時に抱いていたキョンに対する腹立ちが原作を読んでいる際には一切わいてこなかったのも我ながら意外。これが初『ハルヒ』だったらまた違っていたかもしれないが、自分の場合、アニメで台詞として耳に入ってくる方が小説の文章として読むよりイラつき度は上のようだ。なぜだろう、杉田智和氏に対して含むところは無いんだが。

改めて分かったのはこれが正しく青春小説(もしくはジュブナイル)であるということだ。読者に近しいのは語り手であるキョンだが、彼が抱く「退屈な代わり映えのしない日常から脱したい」という欲求、同時にそれは大抵の場合実現しないという諦念は普遍的な感情だ。中高生にとっては尚のことだろう。ヒロインであるハルヒも基本的には同じ思考だ(彼らは似たもの夫婦なのだな)。だが決定的な違いもある。ハルヒに有ってキョンに無いものは行動を起こそうとする意思、待っていても訪れないなら自分で作り出すというバイタリティだ。ハルヒの言動に終始ツッコミまくるキョンだが、それはハルヒのやり口に対してであって目的そのものは一切否定していない。当然だ、ハルヒはある意味、キョンにとって(同時に読者にとっても)理想の姿なんだから。

そんなハルヒからキョンは承認と要請というご褒美を貰う。宇宙人でも未来人でも超能力者でもない、ましてやセカイをどうこうできる力も無い。そんなキョンをハルヒは承認する、「ここにいてもいい」と。さらに「あなたにここにいて欲しい」と求めさえする。自分が認められること、必要とされること。そんな充足感すら与えてくれるんだ、人気も出るはずだよ。・・・考えすぎかな。

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 谷川 流
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/07
  • メディア: 文庫

『消失』について。読んだのはこちらが先だ。映画を観て原作にも興味が湧いたからだが、他所で目にした『憂鬱』と『消失』は一種の姉妹編、もっと言うなら『憂鬱』のSIDE-Bが『消失』なのだという指摘が気になっていたのもある。二冊を読み終えてなるほど、と納得がいった。『憂鬱』ではハルヒがメンバーを集めSOS団を結成、胸躍る非日常が幕を開ける。対して『消失』ではキョンがSOS団メンバーの再集結に成功、懐かしい非日常が再び始まる。ヒロイン格の二人(ハルヒの場合は未遂だったが)が作り出したもう一つのセカイから脱出することをキョンが選択・決断するというクライマックスも共通だ。

キョンが望んだのは宇宙人、未来人、超能力者が揃った破天荒で魅力的な非日常だった。だが『憂鬱』の時点ではキョンにも読者にとっても望ましいものだった非日常が、『消失』においては読者と共有されないという事態が起る。原作者自身によってもう一つの可能性が提示されてしまったからだ。文学少女モードの長門がいて、他のメンバーも皆、いたって普通の人間であるもう一つのセカイ。それは読者の日常と地続き(のように思える)セカイでもある。手が届くかもしれないと思わせてくれる身近な夢を読者はより強く望んでしまったのか。クライマックスでキョン、エンターキーを押すな!こっちのセカイに留まろうぜ!と内心で叫んだ読者は少なくないだろう。作者の思惑と読者の要求が乖離した瞬間なのかもしれない。

まとまりのない感想になった。このシリーズに興味はあるが未読という人がいたら(いないか)、せめて『憂鬱』だけでも手にとって欲しいと思う。ライトノベルに対する偏見や先入観はこの際捨てて。上でも書いたがちゃんと青春小説してるし。大風呂敷を広げておいて畳むどころか投げっぱなし、最後は臆面も無くラブコメで〆る、というあたりも楽しいですよ。

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円居挽『丸太町ルヴォワール』 [本‐小説]

書き下ろし、しかも作者の長編デビュー作らしいが十分に楽しめた。サクサク読めるのも良かったし。

丸太町ルヴォワール (講談社BOX)

丸太町ルヴォワール (講談社BOX)

講談社BOXを手に取ったのは初めてだ。アニメも好評な『化物語』もここから出ているみたい。公式サイトのラインナップを眺めると、どんな層を対象としたレーベルなのかおおそよの見当は付くが、広義にはライトノベルの範疇と考えていいのかもしれない。以下あらすじ。

祖父殺しの嫌疑をかけられた城坂論語(しろさかろんご)は、変幻自在の論客が丁々発止の応酬を繰り広げる私的裁判“双龍会”の被告となる……容疑を解くためではなく、事件当日、屋敷の一室で2人きりの甘く濃密な時間を過ごした謎の女性“ルージュ”と再会する、ただそれだけのために……。

舞台は京都だ。いわゆる法廷ものなんだが法に基づく厳格な裁判ではなく、私的裁判“双龍会”は儀式であり娯楽でもあるという設定で、仮に法律上は有罪であっても相手を論破しさえすれば勝ち。法廷というよりも競技ディベートみたいな感覚かも。イメージとしては人気ゲームの『逆転裁判』が近いかもしれない。各登場人物の造形も程よく漫画的だし(あそこまでギャグ寄りではないが)。おかげで双龍会のシーンはとても楽しく読めた。やってることは屁理屈のこね回し合いってことなんですが。

言葉での丁々発止が繰り広げられる本作、勘のいいミステリ好きなら既にピンときてるかもしれないが、あえて分類するなら叙述トリック系というやつです。自分もなんとなく予想は付いたんだけど、ぬるいミステリ読みなもんでほとんど見抜けなかった。「おお、なるほど、そういうことか」と感心しっぱなし。最後の最後まで仕掛けがあるので楽しかったけど(やや負け惜しみ)。ミステリであると同時に“ボーイ・ミーツ・ガール”な恋愛ものでもあって、ラストは赤面しちゃうほど綺麗な締めくくりでした。

次回作も読んでみたいと思う。楽しかった。

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ダイアン・セッターフィールド『13番目の物語』上・下巻 [本‐小説]

読み終わったが感想を書いてなかったので。上・下巻と結構なボリュームがありながらサクサク読み進められた。若干の不満はあるが楽しめる本だった。

13番目の物語 上13番目の物語 下

13番目の物語 上(日本放送出版協会)
13番目の物語 下(日本放送出版協会)

著名なベストセラー作家でありながら、本当の姿を明かすことなく生きてきたヴァイダ。
古書店を手伝いながら小さな伝奇物を書いて静かに暮らしていたマーガレット。
ふたりがひとつの作品に取りくんだとき、とてつもない「真実の物語」が産声をあげた。
守りぬかれた秘密、禁じられた遊び、決して揃わないカード......

そして、最後に謎を解く鍵を握るものはだれか?

ジャンルは一応ミステリになるのか。何か事件が起きてそれを解決するわけじゃなく、ある人物の秘められた過去が物語の進行とともに明らかになる、という感じ。その人物とは上に引いたあらすじにもある老作家ヴァイダだ。彼女は“現代のディケンズ”とも称される稀代の物語作家で、「物語こそ至上、真実に勝るものはないとか言ってる奴は素人、10年ROMってろ」と嘯くような人物。これまでにも会見や取材において自身の出自を問われると、およそ真実とは思えないことを語り決して過去を明かさなかった。そんな人物がもう一人の主人公であるマーガレットにすべてを話すと連絡してくる。なぜ今、しかもプロの伝記作家ですらない彼女を指定したのか。そしてこれまで頑なに口を閉ざしていた過去とはどのようなものなのか。そんなわけで、小説の大半は老作家による口述形式になっている。

ここから少々ネタバレ気味かも。物語は真実に勝ると嘯く老作家の口から語られることはそもそも本当なのか、という点も趣向の一つだ。自分の過去を語っているくせにどういうわけか主観ではなく客観、三人称なこともポイントか。まあ半世紀以上も昔の、自分が生まれる前の出来事も含むから伝聞による情報も当然ある。その意味では三人称となっても不自然ではないが、実はここが一種の叙述トリックにもなっていて、終盤、あるアイテムの登場をきっかけに「なぜ三人称であったのか」が明らかになる仕掛けなのだ。少々後出しジャンケン的なものを感じないでもないが、ここまでに登場した多くの要素が別の意味を持ち始めるのは面白かった。

最初に「若干の不満」と書いたのは、老作家の言葉を記録するマーガレットの人物像に関してだった。彼女にも複雑で悲しい過去があり、物語の中でそれと向き合い克服していく、というのがいわば横糸となっている。でもなんかね、この部分がピンとこなかった。登場人物の境遇に共感できないと駄目なわけではないが、それにしてもな、自分には本当にピンとこなくて蛇足になってる印象だった。受け止め方次第では「そこでオカルトかよ」と突っ込みたくもなるし。相性が悪かったのかもしれない。

そういえば主人公の好きな物語として書名が挙げられていた『ジェーン・エア』、あるいは『白衣の女』といった古典的名作を自分は読んでいないんだな。これはまずい、いずれちゃんと読まなくては。

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