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映画『あしたのジョー』 [映画感想‐邦画]

漫画やアニメの実写化と聞くだけで思わずフレーメン反応のような表情になりがちで、興味を持ちつつ結局は映画館に行かずじまい、レンタルでの視聴になりました(実際に見たのは去年のうちですが)。結論から書いてしまうとキャストも含めイメージを損なうことなく実写化できてたように思います。ですが単に上手くなぞっただけに留まった、という印象も同時にあるんです。熱くはなれなかったんですね、試合のシーンでさえ。

※なお今回はネタバレにあまり配慮してません。

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今回の映画で描かれるのは力石戦をクライマックスに、一旦ドヤ街を離れたジョーが再び帰ってくるまで。その意味ではテレビ版を再編集し劇場版として1980年に公開されたアニメ版『あしたのジョー』一作目とほぼ同じですね。どの場面を残しあるいは削ったのか比較するのも面白いかな、と劇場版アニメを見直そうかと思ったんですが150分もあるので止めました。興味がある方は見比べてみてください。

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では本題に。先ずはキャスト関連から。プロボクサー顔負けなトレーニングを積みきっちり体を作って臨んだジョー役の山下智久、力石役の伊勢谷友介の二人には素直に感服します。大したもんだ。熱くなれなかったと書いた試合のシーンですが、二人を中心にカメラがぐるぐる回りながらボディを叩き合うとこは「お、良いじゃないか」と思いましたしね。でもジョーのクロスカウンターや力石戦での決まり手となるアッパーのシーンは間が抜けた感すらありお世辞にも良いとは言えません。他にも試合シーンはありますが尺を取ってじっくり見せる(つまり見せ場の)試合に限ってビミョーになる。これには理由があって、決めのパンチを繰り出す、あるいは相手に当たるインパクトの瞬間などスローモーションを多用し過ぎているんですね。時にはCGも使って顔がゆがむ様を再現したり。アニメ版の表現を積極的に取り入れたのかもしれませんが、逆に間が抜けた印象に繋がってしまったように感じました。

キャストのことをもう少し。予告等を見て最も不安だった香川照之演じる丹下のおっちゃん、なにしろあのメイクですから安いコスプレショーになってたらどうしようとか考えてて。これが意外にも悪くなかったんです。それどころか主要キャスト中、最も拳闘が様になっていたという驚き(ご本人は熱狂的なボクシングファンでもあるそうで)。失礼なこと考えててすみませんでした。次に不安だったのが香里奈演じる白木葉子、これは懸念が当たってしまったかなーと。やはりイメージが違う気がします。そしてこの映画での最大の変更点がこの白木のお嬢さん絡みで、後述しますがそこを変える必要あったのかなーと最後まで納得がいきませんでした。

『あしたのジョー』は熱狂的に支持された伝説的な作品です。原作の完結が1973年、最終回まで描いたアニメ『あしたのジョー2』の完結が1981年。アニメの完結から数えても30年前の作品を今、わざわざ実写映画化するわけです。さらに予告では「この時代の若者にジョーはいるか?」というキャッチコピーまで使われていた。そこまで言うなら製作サイドには明確な意図なりメッセージがあるんだろうと。しかしですね、最後まで見終えても何を訴えたかったのか自分にはさっぱり見えてこなかったんですよ。丹下のおっちゃんにコスプレぎりぎりのメイクを施したくらいですから原作を忠実に再現しようとしたことは確かで、それは舞台を現代に置き換えるといった安易な変更をしなかったことでも明らかです。つまり原作同様、1960年代後半を舞台にしているんですが、現代の観客に訴えかける何かを込められないのなら見た目だけ器用に再現した時代劇でしかないでしょう。かつて同時代の若者を熱狂させたジョーたちの生き様を通して再び現代に切り込むことができないならノスタルジーに特化・偏重した『ALWAYS 三丁目の夕日』の方がまだマシです。

他に幾つか気になった点などを。一つは先にも書いた白木葉子に関する変更です。彼女は白木財閥のお嬢さまですが、この映画では彼女もまたドヤ街出身である(白木家には養女として迎えられた)となっています。つまり出自に関する部分が大きく変えられたわけですね。これね、変更する必要があったのかなーと。葉子に関するドラマを膨らませたかったのかもしれませんが、あまり上手く機能してなかったんです。さらに言えば、身分も気位も高い女と野性味溢れるアウトローな男との関係、これって梶原一騎作品の特色であり重要なモチーフだと思うんです。わざわざ変更するならもっと活かして欲しかったですね。

またこの映画で描かれるのは極めて狭い範囲なんですね。具体的には冒頭の少年院、丹下ジムを中心とした泪橋やドヤ街周辺、あとは試合会場(リングやロッカールーム)、せいぜいこの程度です。ジョーたちが生きた時代がどんなものだったかなんてさっぱり伝わりません。象徴的なのは丹下のおっちゃんがジョーに向かって“わしとお前とでこのなみだ橋を逆に渡り、あしたの栄光を目指して第一歩を踏み出したいと思う”と語る有名なシーンです。彼らが目指す栄光が、なみだ橋を逆に渡ったその先の景色が一切映し出されません。別にドヤ街とは正反対の街並みが「あしたの栄光」だと言うわけじゃないですし、当時の街並みを(たとえCGであっても)再現するのは大変だという事情も理解しますが、ここはやはりね、バーンと見せて欲しかったなーと。

おっさんの繰り言みたいな感想になりました。映像化に関してはアニメ版という優れた前例を知っているだけに点が辛くなったのは否めません。逆に原作もアニメ版も知らない若い人たちにこそ伝わるものがあるのかもしれないですね。

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arkstar

人気漫画、アニメの実写化は制作サイドのメッセージなんてこれっぽっちも無いと思います。
単純に、ネームバリュー+売れてるタレント起用=原作ファンと人気タレントファン取り込み。
その上、原作コスト無しっていう事しか考えてないと。

だからこそ、ヤマトもああでしたからねぇ。
by arkstar (2012-02-24 21:04) 

chokusin

>arkstarさん
あまりその辺を期待し過ぎない方が良いんでしょうかね。
声高にテーマやメッセージを主張されても困る場合はありますが、何も無いっていうのもそれはそれでどうなの、と思っちゃうんです。難しいですね。

xml_xslさん、「直chan」さん、arkstarさん、takaoさん、
nice!をありがとうございます。
by chokusin (2012-02-26 11:58) 

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