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映画『借りぐらしのアリエッティ』 [アニメ感想‐映画]

先日やっと観てきたので感想など。実は観た直後にTwitterでとりとめもなく呟いたりしていたのだが、そのまとめ的な意味もあるかな。かなり長いです、ご勘弁(自分でもびっくり)。
公式サイトはここ⇒【借りぐらしのアリエッティ 公式サイト

借りぐらしのアリエッティ [Blu-ray]

借りぐらしのアリエッティ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: スタジオジブリ
  • メディア: Blu-ray

スタジオジブリ生え抜きの、しかもアニメーター畑の新人監督による処女作として公開前から注目されていた本作、これまで幾度か同様の試みがされながら宮崎駿の後継者はついぞ現れなかった。ジブリ関係者にとっても頭の痛い課題だろうが、当の宮崎駿自身が若手監督の芽を潰してきたという見方もあってなかなかややこしい話だ。この辺りのことは先日放送されたNHKの特番でも触れられていたから目にした人も多いだろう。

自分もこの特番を見た。映画を観に行く前にだ。昔なら観賞前に一切の事前情報をシャットアウトしようとしたものだが、自分にとってジブリ作品はその程度のものになった、ということかもしれない。もう少し特番に関して触れると、最も興味深かったのはスタッフたちの反応だった。絵コンテが宮崎駿のOKを貰っていない(見せていない)と聞いた途端、「それで本当に大丈夫なのか」と強い不安を隠そうとしなかったことだ。それも新人監督の目の前で。自分たちが関与する作品の監督に対して見せる態度ではないよな。別番組のインタビューで米林監督は「(スタジオジブリ)内部のアニメーターが監督をやることなんてないと思ってた」というコメントをしていたが、やはりそういう空気が蔓延している、スタジオジブリ=宮崎駿工房なんだと再認識させられた。これからは変わっていくんだろうし、変わらないようならスタジオジブリに未来はない。

ここから感想...なんですが長くなったので畳みます(ネタバレは無いです、多分)。


さて、そろそろ本題に。率直な印象は「小品」かなあ。スタジオジブリの看板を背負った夏の大作という感じではない。劇場用作品というよりも、昔あった日生ファミリースペシャル枠で放送されるのがぴったりな作品かもと感じた。他には女性向け(というのもあれだが)かなあと。少なくとも男性よりは女性の方が好意的に受け止めてくれるような気がする。以前見かけた他の方の感想に「心の乙女度」というキーワードがあって、確かにその高さが求められるかも。映画の中でも印象的に用いられるアイテムにドールハウスがあるんだが、スケールが小さいのに精巧な細工が施された物を愛でる感覚。前述した特番の中でも取り上げられたが終盤、「アリエッティが翔の手に乗る」くだり、相手役の少年が手を差し伸べる→それに応じるヒロインというシーン(おそらく米林監督にもそれ以上の意図はなかったと思う)に対して、宮崎駿は「愛玩物めいて見える(見えかねない)」という危惧を抱いたそうだ。映画を観終えて考えるとなるほどなあと。

これまでのジブリ作品は主人公の世界が冒険等を経て外へと開けていく物語だった。例外といえるのは『耳をすませば』くらいだが、あれにしてもまあ雫の書いた物語を映像化したパートを冒険と見ることもできるし、自ら物語を紡ぐことで結果的に彼女の世界は外へと向いた。じゃあ今回の『アリエッティ』、確かに冒険も外の世界へと踏み出す部分もある。小人であるアリエッティの視点ではだけど。彼女たちが「借り」に出かけるパートは正にそうだ。ところがアリエッティたち小人側の視点の他に相手役である翔や人間たちの視点が入り込むからやっかいなんだ。最後に翔の心境に変化があり、縮こまっていた彼の世界(未来)は開けていくことを予感させるものの、基本的に人間たちの世界は現状に留まり続ける。小人という未知の存在と出会ったことが新しい関係の始まりを予感させない。視点が内向き・外向きで真逆なんだ。これはちょっとつらい。

人間よりもスケールが小さく、その存在がファンタジーでもあるアリエッティたちの冒険は、まあ『トイ・ストーリー』的ではあるんだ。いや、『トイ・ストーリー』にだって人間側の視点は入ってくるじゃないか、と言われるかもしれないし確かにそうなんだが。でもやはり違うんだよね。少なくとも『トイ・ストーリー』には『アリエッティ』のような混線している感じはない。人間とおもちゃ、ここの線引きはきっちりとしてる。ウッディたちおもちゃは自分たちが意思のある存在だと人間たちに気付かれないよう行動する(そう描かれる)。おもちゃ側はおもちゃ側で、人間側は人間側で描写が分けられてるから混線しないんだ。だが『アリエッティ』は人間と小人が交流し一緒に行動しちゃうものな。まあそういうお話だから仕方がないんだけど。

さらに言えばスケールの異なる存在が交流する、という意味ではむしろ『ウルトラマン』的ですらあるかも。だがそう見た場合でも混線してるんだ。ウルトラマンと地球人は目的とか共通、同じ側に立っている。『アリエッティ』でも主役の二人は同じ側に立ってると言ってもいい。それならウルトラマンと地球人の関係と同じ。ところがここに「怪獣」側の、敵対者の立場が入り込んでくる。お手伝いのおばはんですが。これが『ガンバの冒険』のように終始ネズミの(今回なら小人の)視点で描かれているなら、翔もお手伝いさんも、人間は巨大で未知な、天災的な描写で統一できるんだけど。

他に気になったのは虫の描写だった。妙にアニメなキャラとして描かれてる。『トトロ』のススワタリのようだ。時々おめめぱちくりさせちゃったり(これは猫やカラスも同様)。これが本当に気になっちゃって。なにせ小人の世界を描くわけだから、アリエッティのスケールではゴキブリ、コオロギ、ダンゴ虫とか、でかいわけですよ、ナウシカと王蟲の子供くらいの対比。それをリアル寄りに描いたら不気味だもんね、それは分かる。でもあれはやり過ぎだったかなと。ファンタジーに文句言うのが野暮とは承知しつつ、人間と同じ世界に暮らすスケールの異なる小人の日常を描くために、リアル寄りな見せ方を積み上げてるのに虫の部分だけ「はい、ファンタジーですよー」とやられるとバランスが悪くて困る。

その小人の日常の描き方はお見事だった。アリエッティたちの「借り」のシーン、我々人間にはなんてことのない食器棚や流し台が彼らにとっては目もくらむような断崖絶壁で。そこを上り下りするのに見慣れたアイテムを「おお、そんな風に使うのか」と感心しちゃうくらい丹念に見せてくれる。ここらの嘘のつき方は上手い。なまじそれを見せられちゃうから虫や動物関連の見せ方が浮いちゃうんだけど。

それから忘れちゃいけない、「怪獣」として描かれてしまったお手伝いさんの部分。ドラマを盛り上げるために敵対者をとりあえず出してみましたという印象だ。これが主人公の乗り越える試練であるなら安易だと思う。作画も樹木希林の演技も頑張ってるだけに醜悪なだけで、ここまで悪者として見せにゃならんかと個人的にはムカムカした。また、一方の主人公である少年・翔。これがまた、どうにも好かん奴でね。正直なところ「え、なんなのお前」って思う。少なくともヒロインの相手役としてはちょっとどうなの?…と。

特筆すべきは音楽だったか。これはとても良かった。主題歌については無理に日本語の歌詞にしない方が良かったかなとは思うが、作品の雰囲気に合っていた。なんだか悪口ばかり書いてしまったが、新人監督の処女作としては及第点以上か。小人側と人間側、どちらの描写に重点をおくか(もしくはフラットに描くか)。あるいは現実とファンタジーとの線引き。この点がどうにも混線してとっちらかってる印象に繋がったのは残念だったが、次回作ではきっと改善されているはず。新生スタジオジブリに期待したい。

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