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竹内真『文化祭オクロック』 [本‐小説]

いわゆる青春ミステリとは相性がどうもよろしくないのか、あるいはおっさんの自分は読み解く感性が既に枯渇したのかは定かじゃないが、苦手意識すら芽生えそうなほどだ。そんなことを言いながら懲りずに手を出すんだから、これは一種のツンデレなんじゃないか(違います)。

文化祭オクロック

文化祭オクロック

この作者の本は初めてだ。現時点では本書が最新作となるらしい。以下あらすじ。

東天高校文化祭初日、ブラスバンド部のオープニング曲終了とともに、突如校内放送から謎の男の声が流れてきた! DJネガポジと名乗る男は、リクエスト曲を流しつつ携帯電話でのリレーインタビュー企画を進めていく。文化祭実行委員会と生徒会の合同企画だというが、どこか怪しい。DJの軽快な喋りに沸く生徒たちを尻目に、二年生の古浦久留美はDJの正体を探り始めるが──。

華やかな文化祭の裏で静かに進行する陰謀と、謎のDJの目的とは?

上に引いたあらすじでは“静かに進行する陰謀”とか“謎のDJ”とか、大仰な書きっぷりだがそれほどでもない。人死にが出るとか血なまぐさい展開は一切無し。作中でいつの時代か明示されてはいないがおそらく現代だ。携帯電話、最近のJ-POP、ケータイ小説に学校裏サイト、果ては「セカイ系」なんて言葉まで出てくる。それら風俗意匠、あるいは社会問題を取り入れながらも全体の印象はオーソドックスなものだ。普遍的なテーマと取るべきだろうが目新しさは無い。

基本的に登場人物は善人ばかり。明るく前向きで肯定的、屈折すらしていないように見える。心が健やかなんだな。結末も実に爽やかだ。そこが少々物足りなくも感じた。決して陰惨で救いの無い物語を読みたいわけではないが、あえて言うなら「綺麗事」に過ぎるかなとも思う。事件の背景に学校裏サイト(この言い方自体、当事者である学生さんには浸透していないという話もあるが)やネットいじめを絡めるなら、もう少しやりようもあったろうになーと。少なくともこの結末を用意するのであればね。エンターテイメントである本作にそこまで求める方が間違いか。であるならそもそも持ち出すべきじゃなかったと思うが。

他には文化祭が舞台でありながら、喧騒や高揚といった独特の雰囲気があまり伝わってこなかったのは少し残念だった。物語の構成上、どうしても主要キャラクター中心の描写が多く、単なる舞台装置どまりになってしまったからか。文化祭が舞台の類似作品は他にもたくさんあるんだろうが、自分がつい比較してしまったのは米澤穂信の『クドリャフカの順番』だった。お祭りの描写も含め個人的にはあちらの方が好みかな。

クセの無い文体は大変読みやすく、結末まで一気に読み進められる。明るく前向きな本作はむしろ若い読者にこそ相応しいのだと思う。まあ文化祭なんて遥か昔のことであるおっさんの感想など当てにはならんですよ。

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藍色

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by 藍色 (2012-05-18 17:37) 

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