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『憂鬱』と『消失』を読んだので [本‐小説]

我ながら今さらにも程があるだろうと。しかも順番がヘンテコなことに。以前から興味を持ちつつも踏ん切りがつかず、映画を観たことが決め手になったからなんだが。結局はTVアニメ→スピンオフ漫画→映画→原作『消失』→原作『憂鬱』となった。読み終えた後、Twitterで呟いたりやり取りさせてもらったこともあって、既に感想を書いた気になっているのだが、折角なのでこちらにも書いておこうと思う。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 谷川 流
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 文庫

先ずはシリーズ第1作目である『憂鬱』、刊行は2003年6月なので実に7年遅れの読了ということになる。先入観もあったのか読み始めは妙に構えてしまったが最後まで楽しく読めた。というか面白いわこれ。スニーカー大賞の大賞受賞は伊達じゃない。この一作で綺麗に完結しているから、シリーズ化は蛇足でもあったのか。基本的な情報を既に知っていたとはいえ、アニメよりも小説の方がすんなり入っていけた。アニメ視聴時に抱いていたキョンに対する腹立ちが原作を読んでいる際には一切わいてこなかったのも我ながら意外。これが初『ハルヒ』だったらまた違っていたかもしれないが、自分の場合、アニメで台詞として耳に入ってくる方が小説の文章として読むよりイラつき度は上のようだ。なぜだろう、杉田智和氏に対して含むところは無いんだが。

改めて分かったのはこれが正しく青春小説(もしくはジュブナイル)であるということだ。読者に近しいのは語り手であるキョンだが、彼が抱く「退屈な代わり映えのしない日常から脱したい」という欲求、同時にそれは大抵の場合実現しないという諦念は普遍的な感情だ。中高生にとっては尚のことだろう。ヒロインであるハルヒも基本的には同じ思考だ(彼らは似たもの夫婦なのだな)。だが決定的な違いもある。ハルヒに有ってキョンに無いものは行動を起こそうとする意思、待っていても訪れないなら自分で作り出すというバイタリティだ。ハルヒの言動に終始ツッコミまくるキョンだが、それはハルヒのやり口に対してであって目的そのものは一切否定していない。当然だ、ハルヒはある意味、キョンにとって(同時に読者にとっても)理想の姿なんだから。

そんなハルヒからキョンは承認と要請というご褒美を貰う。宇宙人でも未来人でも超能力者でもない、ましてやセカイをどうこうできる力も無い。そんなキョンをハルヒは承認する、「ここにいてもいい」と。さらに「あなたにここにいて欲しい」と求めさえする。自分が認められること、必要とされること。そんな充足感すら与えてくれるんだ、人気も出るはずだよ。・・・考えすぎかな。

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

  • 作者: 谷川 流
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2004/07
  • メディア: 文庫

『消失』について。読んだのはこちらが先だ。映画を観て原作にも興味が湧いたからだが、他所で目にした『憂鬱』と『消失』は一種の姉妹編、もっと言うなら『憂鬱』のSIDE-Bが『消失』なのだという指摘が気になっていたのもある。二冊を読み終えてなるほど、と納得がいった。『憂鬱』ではハルヒがメンバーを集めSOS団を結成、胸躍る非日常が幕を開ける。対して『消失』ではキョンがSOS団メンバーの再集結に成功、懐かしい非日常が再び始まる。ヒロイン格の二人(ハルヒの場合は未遂だったが)が作り出したもう一つのセカイから脱出することをキョンが選択・決断するというクライマックスも共通だ。

キョンが望んだのは宇宙人、未来人、超能力者が揃った破天荒で魅力的な非日常だった。だが『憂鬱』の時点ではキョンにも読者にとっても望ましいものだった非日常が、『消失』においては読者と共有されないという事態が起る。原作者自身によってもう一つの可能性が提示されてしまったからだ。文学少女モードの長門がいて、他のメンバーも皆、いたって普通の人間であるもう一つのセカイ。それは読者の日常と地続き(のように思える)セカイでもある。手が届くかもしれないと思わせてくれる身近な夢を読者はより強く望んでしまったのか。クライマックスでキョン、エンターキーを押すな!こっちのセカイに留まろうぜ!と内心で叫んだ読者は少なくないだろう。作者の思惑と読者の要求が乖離した瞬間なのかもしれない。

まとまりのない感想になった。このシリーズに興味はあるが未読という人がいたら(いないか)、せめて『憂鬱』だけでも手にとって欲しいと思う。ライトノベルに対する偏見や先入観はこの際捨てて。上でも書いたがちゃんと青春小説してるし。大風呂敷を広げておいて畳むどころか投げっぱなし、最後は臆面も無くラブコメで〆る、というあたりも楽しいですよ。

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