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ダイアン・セッターフィールド『13番目の物語』上・下巻 [本‐小説]

読み終わったが感想を書いてなかったので。上・下巻と結構なボリュームがありながらサクサク読み進められた。若干の不満はあるが楽しめる本だった。

13番目の物語 上13番目の物語 下

13番目の物語 上(日本放送出版協会)
13番目の物語 下(日本放送出版協会)

著名なベストセラー作家でありながら、本当の姿を明かすことなく生きてきたヴァイダ。
古書店を手伝いながら小さな伝奇物を書いて静かに暮らしていたマーガレット。
ふたりがひとつの作品に取りくんだとき、とてつもない「真実の物語」が産声をあげた。
守りぬかれた秘密、禁じられた遊び、決して揃わないカード......

そして、最後に謎を解く鍵を握るものはだれか?

ジャンルは一応ミステリになるのか。何か事件が起きてそれを解決するわけじゃなく、ある人物の秘められた過去が物語の進行とともに明らかになる、という感じ。その人物とは上に引いたあらすじにもある老作家ヴァイダだ。彼女は“現代のディケンズ”とも称される稀代の物語作家で、「物語こそ至上、真実に勝るものはないとか言ってる奴は素人、10年ROMってろ」と嘯くような人物。これまでにも会見や取材において自身の出自を問われると、およそ真実とは思えないことを語り決して過去を明かさなかった。そんな人物がもう一人の主人公であるマーガレットにすべてを話すと連絡してくる。なぜ今、しかもプロの伝記作家ですらない彼女を指定したのか。そしてこれまで頑なに口を閉ざしていた過去とはどのようなものなのか。そんなわけで、小説の大半は老作家による口述形式になっている。

ここから少々ネタバレ気味かも。物語は真実に勝ると嘯く老作家の口から語られることはそもそも本当なのか、という点も趣向の一つだ。自分の過去を語っているくせにどういうわけか主観ではなく客観、三人称なこともポイントか。まあ半世紀以上も昔の、自分が生まれる前の出来事も含むから伝聞による情報も当然ある。その意味では三人称となっても不自然ではないが、実はここが一種の叙述トリックにもなっていて、終盤、あるアイテムの登場をきっかけに「なぜ三人称であったのか」が明らかになる仕掛けなのだ。少々後出しジャンケン的なものを感じないでもないが、ここまでに登場した多くの要素が別の意味を持ち始めるのは面白かった。

最初に「若干の不満」と書いたのは、老作家の言葉を記録するマーガレットの人物像に関してだった。彼女にも複雑で悲しい過去があり、物語の中でそれと向き合い克服していく、というのがいわば横糸となっている。でもなんかね、この部分がピンとこなかった。登場人物の境遇に共感できないと駄目なわけではないが、それにしてもな、自分には本当にピンとこなくて蛇足になってる印象だった。受け止め方次第では「そこでオカルトかよ」と突っ込みたくもなるし。相性が悪かったのかもしれない。

そういえば主人公の好きな物語として書名が挙げられていた『ジェーン・エア』、あるいは『白衣の女』といった古典的名作を自分は読んでいないんだな。これはまずい、いずれちゃんと読まなくては。

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コメント 3

ミナモ

わたしも読みました~^^*
最後あたりで、若干、ファンタジー要素が入ってきましたね。
恩田さん好きなので、こういった展開には慣れていましたが、そういった見方もあるのかと新鮮な気持ちで記事拝読しました~。
著者の次回作が楽しみです
by ミナモ (2010-01-23 10:47) 

chokusin

>ミナモさん
強引に難癖つけてるみたいでお恥ずかしい限りです。
子供のころに“自分の中に作り出した友人”だったら素直に納得できたんですが。
でも楽しめましたので自分も次回作は楽しみですね。

恩田陸作品はあまり読んでないんですが、証言から過去の事件の別な側面が浮かび上がる、という点で『ユージニア』にも似てるかなあと思いました。
by chokusin (2010-01-24 13:01) 

chokusin

xml_xslさん、takaoさん、はっこうさん、ブラザーボブかきもとさん、Lunamariaさん、
genpatiさん、アロンダイトさん、「直chan」さん、takemoviesさん、アレクリパパさん、
shinさん、kakasisannpoさん、ぶさいくたろうさん、sam00さん、おどんとグリフスさん、
ばんさん、ほりけんさん、ゆかさん、ミナモさん、nice!をありがとうございます。
まとめてのお礼ですみません。


by chokusin (2010-01-24 13:06) 

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